アクティブ騒音制御(能動的騒音制御 ANC: Active Noise Control)は、騒音と180度位相が異なる逆位相の音を制御スピーカーから出力することで実現します。 騒音は時々刻々と周波数、位相そして振幅も変化するため、それを打ち消す制御音もそれに応じて変化させる必要があります。
制御装置は騒音源の近傍に設置したマイクからレファランス信号を入力し、制御音を計算により作り出します。 また騒音源からある程度離れた場所(制御スピーカより下流側)に設置したマイクからエラー信号を入力し、そのエラー信号が最小となるように、常時”学習”をしながら最適な制御信号を算出します。 つまり簡単なAIのような機能を持ちます。 騒音の周波数や振幅が変化しても、周囲の騒音が増音しないように瞬時に追従する能力が必要です。
騒音がランダム信号である場合、騒音源に近い上流にマイクを設置し、先回りをした逆位相制御音で騒音を打ち消します。 これをフィードフォワード制御と呼びます。 空調ダクトや防音壁に使われているシステムです。
防音壁の上部に制御スピーカー数個を並べて設置し、上流側のマイクからレファランス信号を入力し防音壁の下流側を制御します。 このときスピーカー間隔は対象となる騒音の波長の1/4の間隔で並べる必要があります。 例えば騒音の周波数が100Hzのとき、80cm間隔以下でスピーカーを並べます。 スピーカーの数は制御範囲の横方向距離分が必要です。 ANC-Octetは、8個の制御スピーカーから構成されます。
原理的に騒音源から遠く離れた範囲を制御しようとすると、制御範囲を広げることができます。 防音壁の必要がなくなります。 この場合、騒音がすでに平面波となるような離れた位置に制御スピーカーを真横に並べます。 制御スピーカー・アレーを騒音源からはなすことにより、騒音の距離減衰とスピーカー・アレーの制御音との距離減衰が似てくるため制御範囲を広げることができます。
騒音が周期性信号である場合、騒音源に近い場所に制御スピーカーを設置し、一周期遅れの逆位相制御音で騒音を打ち消します。 これをフィードバック制御と呼びます。 ディーゼルエンジンなどの排気音の減音に使われます。 三次元的に音響パワーを下げることができるので大きな効果を期待できますが、騒音源のパワーに相当する大出力の制御スピーカーが必要となります。 ANC-Duoは、建設機械の大音響パワーに打ち勝つパワーアンプと2個のスピーカーから構成されます。
制御スピーカーはできるだけ騒音源に近づける必要があります。 通常、対象となる騒音の波長の1/4以内に、騒音源を中心として点対称位置に二つの制御スピーカーを設置します(騒音が100Hzのとき、80cm以内に設置)。 制御点として2個のエラーマイクを騒音の下流側に設置します。 二つの制御スピーカーから出力された合成波を、騒音源の周囲となる2点で波面を合わせて打ち消すことで、制御点から遠方の全ての領域で減音できることになります。
騒音の伝搬方向とは異なる方向に制御しようとすると、干渉縞ができ、増音箇所が発生します。
制御スピーカーが騒音源から離れている場合、広範囲で波面を合わせるために複数個の制御スピーカーが必要です。
反射音を制御しようとすると、騒音の伝搬方向とは異なる方向から制御することになり、干渉縞ができて増音箇所が生じます。 制御スピーカーを騒音源に近接させることで、直接音と反射音を同時に減音させることができます。
単位 | 60Hz有り | 60Hz無し | 差 |
dB(A) | 61 | 60 | 1 |
A特性補正値(JIS)抜粋 | |
---|---|
中心周波数(Hz) | 補正値(dB) |
50 | -30.2 |
63 | -26.2 |
80 | -22.5 |
100 | -19.1 |
125 | -16.1 |
160 | -13.4 |
200 | -10.9 |
... | ... |
1000 | 0 |
単位 | 60Hz有り | 60Hz無し | 差 |
dB(F) | 83 | 63 | 20 |
暗騒音帯域(Hz) | 60Hz有り | 60Hz無し | 差 dB(A) |
---|---|---|---|
40 - 1000 | 61 | 60 | 1 |
40 - 500 | 60 | 50 | 10 |
40 - 200 | 59 | 42 | 17 |
周波数(Hz) | 50 | 160 | 500 | 1000 | 2000 | 4000 |
---|---|---|---|---|---|---|
減衰量(dB) | 0.3 | 2.6 | 10.9 | 18.6 | 39 | 118 |
〒651-1123
神戸市北区ひよどり台5-12-44